設立の趣旨および背景

最近の科学技術の進歩発展は、改めて申すまでもなく、まことに目覚ましいものがあり、研究内容の奥行きの深さとともに窓口の拡大を促し、相互関連分野が益々多岐多様化する状況にあります。
例えば、有機系工業材料の一つである高分子についても、ゴムの加硫、プラスチックの成型加工、繊維の特殊延伸による改質加工、またこれらの耐久、耐候性、寿命予測など、いずれをとっても実用条件下における物質の構造、それらの物理、化学的変化とその周辺の付随的重要課題の基礎研究の深化を必至としており、その上に上部構造としての技術開発が展開されると考えられます。

しかしながら、基礎研究の深化は一方で研究の分岐化を促進させ、しかも、技術開発は逆にそれらの総合化として成立するため、技術開発は逆にそれらの総合化として成立するため、専門分野を共にする研究者、技術者の相互依存性はかつてなかったほど切実なものになっております。
しかるに、近年の高度先端技術に象徴されるように産業界の技術革新は時代を区分するほどの質的展開を遂げようとしており、わけても新素材などの材料革新には著しいものがあります。このような技術革新の時代の到来とも言える環境に対応し、かつ先行するためにも共通の研究討論および情報交換の場をもちたいとの多数の意見が出されるのも必然の成り行きでありましょう。これによって、関係する研究者、技術者が社会に寄与できると考えております。

以上のような観点から、志を同じくする有志が1987年9月12日、耐久材料研究会(仮称)を発足させ、その設立準備運営委員が中心になり、1987年11月24日(日大会館、東京・市ヶ谷)に同設立記念講演会を開催致しました。当日は、一か月足らずという異例の短期間のご案内にもかかわらず、大多数の出席者を迎え、大成功のうちに終わることができました。

この事実は耐久材料にかかわる諸問題に対して高い関心を寄せる関係者がいかに多いかと言うことを示すものと理解されます。その後、上記運営幹事が中心になり研究会の運営等について度重ね討論を行った結果、この際、耐久材料研究会を解消し、国際的で幅広い活動、研究成果の発表の場としての論文誌の発行、あるいは学際的共同研究などを行う学会を設立することになりました。
そこで、学会名称について再検討した結果、マテリアルライフ学会(Materials Life Society, Japan)が、設立趣旨に最もふさわしく国際的であるということで決定されました。

以上、すでにご理解いただきましたように、本学会の目的を要約すると「有機、無機、金属からなる素材およびそれらを加工して得られる各種材料と構成物・製品並びにバイオマテリアル、古文化財などの耐久性、寿命予測と制御についての科学および技術の進歩をはかり、もって、学術、文化と産業の発展に資すること」と表現できると思われます。それゆえ、本学会にとって、貴殿のこれまでの関連分野における御活躍と、特にその見識および指導力が我々の学会の設立、並びに発展のために不可欠であると考えるものであります。

本学会は当面の課題として、有機工業材料の寿命およびその制御にまつわる諸問題を対象とし、国内の研究者、技術者に参加を呼びかけますが、将来は上述のように関連部分を金属、セラミックスなどの無機工業材料、複合材料、生体系などに広げると共に国際的な環を広げ、国際会議などを催す予定であります。

1988年11月

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